こんにちは。ドローイングによる冷間ロール成形を得意とする宗和工業(そうわこうぎょう)の岸野です。
ドローイングとフォーミングの特徴について説明していきます。特に断りがない場合、汎用機の場合についての説明をしています。1種類のみを製造する専用機の場合は異なる部分もあります。
ロールの動き方の違いとして
ドローイング:ロールは自由に動く状態で、材料をつかんで引っ張って加工している。
フォーミング:ロールがモーターと連動したシャフトに固定され、ロールが回転して材料を押し出している。
という違いがあり、そこから生産性・ロール形状(ロール金型代)・汎用性・製品形状などに特徴が出てきます。
まず生産性について、ドローイングは初期位置から材料を、掴んで引っ張り・切断して離して・初期位置に戻って掴む、を繰り返す。(最上図左)初期位置に戻るという工程がある為、加工しない時間が発生し、生産性が悪くなります。一方フォーミングは材料がある限り、止まることなく製品を加工し続ける(最上図右)為、生産性が良くなります。また、ドローイングは材料を掴んだ部分は変形するため、破棄するので歩留りは悪くなります。フォーミングは破棄する部分が無いので歩留りは良いです。
次にロール形状について、ドローイングはコンパクトにしやすく、フォーミングは大きくなりやすい。
理由はドローイングは材料の速度に合わせてロールが動くため、上下ロールの大きさが違っていても基準面でのロール速度は同じで傷がつきにくくなります。
一方フォーミングは決まった回転の速さでロールが動くため、基準面でのロール速度(=ロール径)をそろえておかないと、速度差で傷がついたり、押出速度が変化してしまいます。※1
※1 同じ回転速度で回っていると、中心から遠くなるほど表面の速度は速くなる。この図では90度回る間に小さいロールの表面は1の距離移動し、大きいロールの表面は2移動する。同じ時間で2倍の距離を移動=2倍の速度が出ている。
また、フォーミングは全ての場所で上下ロールの速度を基準面でそろえないと、隣り合う位置のロール速度の差による変形が発生します。(相対速度で見ると左のロールから押し出された材料は右のロールの部分で止められており、後から来る材料をどこかに逃がさなければならないため、上下に逃げる)
その他、摩耗が激しくなりロール寿命が短くなるといった問題が発生します。
これらの問題を解決するため、ロールの大きさを大きなロールにそろえる必要があり大きさに応じて、金型代が高くなります。
ロールマーク
ドローイングにはフォーミングで発生しないロールマークという変形が起こることがあります。ドローイングでは材料を掴んで・離して・戻って・掴んでの往復運動をしますが、掴む部分が戻る間、材料が同じ位置にとどまり、ロールが接触している部分が他の部分より強い圧力を受け、うっすらとへこむことがあります。これがロールマークと呼ばれるものです。フォーミングは常に動き続けているので発生せず、休憩時間など生産を停止している間に発生することがまれにあります。
以上が、ロールの動き方の違いによるドローイングとフォーミングのおおきな違い、特徴になります。
その他の違い・特徴については次回、引き続き説明いたします。
長文最後までお読みくださりありがとうございました。